経口薬療
薬物療法
日本人の糖尿病患者の9割以上を占めるのが2型糖尿病ですが、食事と運動療法が基本となります。それでも不十分な場合は薬物療法が必要になります。薬物療法には、経口薬療法とインスリン療法との二つがあります。 どちらを使うかは患者さんの血糖コントロールの状態や、合併症の危険度などによって判断されます。
経口薬療法
経口薬の使用が最も適した患者は、2型糖尿病で食事療法と運動療法を守っていても、血糖コントロールが改善しない人です。またインスリン療法より経口薬療法の患者が多いのは、血糖値がそれほど高くない場合には経口薬療法だけでも治療効果があり、注射に比べると患者の抵抗感が少ないからです。
経口薬療法の種類
現在、国内で使われている経口薬は血糖を下げる作用によって、大きく5種類に分けられます。

ブドウ糖の利用・吸収にかかわる薬
ビグアナイド薬
小腸で吸収されたブドウ糖は、いったん肝臓に蓄えられます。必要に応じて、肝臓から血液中に放出され、筋肉細胞や脂肪細胞でエネルギー源として使われます。ビグアナイド薬は、肝臓からのブドウ糖放出を抑えるとともに、筋肉細胞、脂肪細胞でブドウ糖の利用を高める作用があります。
▼ジメトスB・グリコラン・メルビンなど
αーグルコシターゼ阻害薬
食事で取り入れられた糖質は小腸でブドウ糖に分解されます。このときには「αーグルコシターゼ」という消化酵素が働いています。αーグルコシターゼ阻害薬は、この消化酵素の働きを抑えて、ブドウ糖の吸収を遅らせる作用があります。それによって食後の急激な血糖値の上昇を抑えることができます。
▼グルコバイ・ベイスン・セイブルなど
インスリンにかかわる薬
インスリン抵抗性改善薬
インスリンが分泌されていても、効きが悪い状態を「インスリン抵抗性がある」といいます。インスリン抵抗性改善薬は、ブドウ糖が筋肉細胞や脂肪細胞に取り込まれるのを助けて、インスリン抵抗性を改善する作用があります。血液中にインスリンが分泌されていても、高血糖が続いている人に使われます。
▼アクトスなど
スルフォニル尿素薬
インスリンは、すい臓のランゲルハンス島β細胞から分泌されています。スルフォニル尿素薬は、このβ細胞を刺激して、インスリンの分泌を高める薬で、持続時間が長いのが特徴です。
▼オイグルコン・ダオニール・グリミクロン・アマリールなど
速効・短時間型インスリン分泌促進薬
スルフォニル尿素薬と同じように、すい臓を刺激してインスリンの分泌を促す薬ですが、非常に早く効くのが特徴です。服用後30分ほどで効果がピークに達するため、食後の急激な血糖値の上昇を抑えるのに、よく使われます。
▼スターシス・ファスティック・グルファストなど
インクレチン関連薬
この薬は最も新しい薬で、インクレチンとは、食事をしたときに小腸から分泌されるホルモンです。インクレチンはすい臓に作用し、インスリンの分泌を高める働きをします。
▼グラクティブ・ジャヌビア・ネシーナ・エクアなどの経口薬とビクトーザ・バイエッタなどの注射薬があります。
経口薬療法の注意点

①正しい服用が大切
薬を飲む時間(食前か食間)や量がきちんと定められています。定められた方法どおりに飲まないと、効果がなかったり副作用が起きやすくなります。α-グルコシダーゼ阻害薬や速効型インスリン分泌促進薬は、食前に飲むように定められています。経口薬を併用するケースも場合もありますので、薬を正しく服用することが大切です。
②食事療法・運動療法も継続
経口血糖降下薬を始めると、血糖値が下がり、食事療法・運動療法をやめてしまう人もいます。糖尿病の治療の基本は、食事療法・運動療法です。食事療法・運動療法を実践して、薬の量を減らせるように努力をしましょう。
③スルフォニル尿素薬には二次無効がある
スルフォニル尿素薬を服用していると、次第に薬の効き目がうすれてくるのが二次無効と呼ばれる状態です。二次無効が疑われる場合は、もう一度食事・運動療法をきちんと行いそれでも改善しない時はかかりつけ医に相談しましょう。
④低血糖に気をつける
薬の作用により血糖値が70mg/dl以下になると低血糖症状が起こります。食事の時間が遅れたとき、ふだんより多く運動したときは注意してください。ふるえ、動悸、発汗、脱力感、眠気、頭痛、目がかすむなどが主な症状です。低血糖の症状が出たら、急いでブドウ糖(または砂糖やジュース)を口にしてください。薬物療法を始めたら、常にブドウ糖や砂糖などを身に付けるようにしましょう。
経口薬療法の注意点
・経口薬を服用しても血糖値が低下しない
・妊娠中、妊娠の可能性がある
・肺炎など重症の感染症である
・足に壊疽がある
・手術前後
・肝臓または腎臓に重症の機能障害がある
